しろラボ

かしこくなりたくてせのびするブログ

あなたの中の良いヤツと悪いヤツ|善と悪の自分と会話を楽しみ心を養う方法

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学生時代に自分と対話していた

 

高校生の時に私が熱心に取り組んでいたことと言ったら、「もうひとりの自分」に向かって文字を書き殴ることであった。家では大きな声で自分に話しかけていた記憶がある。

 

ちょっとヤバいやつじゃないかと思うかもしれないが、それは誤解だ。「筆記療法」なる心理ケア方法があり、これは結構効果は期待できる。私も文字を書き殴るうちに気持ちが落ち着いたため、今になってもたまに書いているわけである。ヤバイやつではないのだ。

 

論文を探していたところ、『二人の自分の対話という形式でのレポート記載が治療者に投影された陰性感情の緩和に有効であった心因性嚥下障害の 1 例』という論文らしい長い名前が目に入った。会話中に詠唱されたら、それまでの会話内容を消されるかもしれない。

 

ゆるーく言い直すと、「患者に2人の自分に対話させるレポートを書いてもらったら、こっちにぶつけてくる負の感情がやわらいだよ!」といったところ。

 

2人の自分に対話させる……?これは私が高校生時代にしていたことと同じではないか。この論文の内容をキチンとまとめれば、私のしていたことはヤバくないと証明できるのではないか。

 

そのような考えに至り、今回の記事に取り上げる論文とした。

 

参考文献:『二人の自分の対話という形式でのレポート記載が治療者に投影された陰性感情の緩和に有効であった心因性嚥下障害の 1 例』

 

医者が患者にレポートを提案してみた

 

この論文が出来上がった背景は、心因性嚥下障害の患者が医者に激しい怒りの感情を向けたためだ。これを「投影」という。

 

投影とは

心理学における投影では、自分自身の認めたくない面を他者に押し付けてしまう心の働きを指します。

 

投影された側は投影した側から心理的/物理的攻撃を受けることがある。例えばカウンセリングでは、自分の嫌な部分を治療者に投影し、「何てヒドイやつなんだ」と怒りをぶちまけることもある。

 

自分の嫌な部分を持っている人が嫌いになるのは、無意識に投影が行われているからこそだ。似た者同士が憎みあう構造である。

 

投影はどんな人でもやってしまうメジャーな行為で、ほんの少しでも心理学をかじったことがある人ならきっとご存知だろう。投影をされるとカウンセリングが困難になるため、カウンセラーを目指す人は対処法もしっかり学ぶことになる。

 

この論文を執筆した小川氏は、投影によって自分に向けられる陰性感情(負の感情)をかわすことを意図して、レポート形式で2人の自分と対話することを患者に勧めた。

 

何の根拠もない悪い自分の言い分を信じるのはばかげています,悪い自分に騙されていることにそろそろ気づいてはどうですか? 良い自分や良い自分の味方である治療者の声に耳を傾けてみてはどうですか? 

 

投影が起こっている状態は、患者が「わるいヤツ」に囚われている状態。レポートを書いてもらい、内なる「いいヤツ」に耳を傾けてもらうことを意図したのだ。

 

 

自分のなかの「わるいヤツ」と「いいヤツ」と「治療者」の構造は以下の図の通り。

 

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投影が起こっている時は、わるいヤツが治療者を攻撃する。

 

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どんな対話になったのか?

 

レポートの記載をしぶしぶ了承した患者は、どのような対話を行ったのだろうか?内容自体はほぼ論文に記載している通りだが、私の解釈でわかりやすく改変した。

 

「わるいヤツ」=「ワル」、「いいヤツ」=「ヨキ」です。

 

ワルとヨキ

 

ワル「ったくよぉ、先生はなんで俺を怒らせることばっか言うわけ?」

 

ヨキ「きっと意図があるんだよ。何かに気づいてほしいんじゃないかなぁ。」

 

ワル「んなことないって。なんか適当に思いつきで言ってるんだって。」

 

ヨキ「そうかなー?」

 

ワル「そうそう。その意図のない言葉に反応して、悪いって言われてるだけさ。……あー、こんな書き方じゃ何倍にもなって怒られるわ。」

 

ヨキ「そんなことないよ。これは先生のためじゃなくて、僕らが治るために書いているんだよ。」

 

どんな人の心にもワルとヨキがいる。ワルは「悪魔」、ヨキは「天使」と表現されることもある。対話はひとりの人間が行うが、このように使い分けられるのは不思議なことではない。

対話を続けた結果どうなった?

ワルとヨキの対話を続けた結果、患者には以下のような変化が現れた。

 

対話による変化

治療者への陰性感情が減った

治療者との信頼関係が回復した

患者の内省が促進された

嚥下障害の症状が緩和された

 

また、こんなコメントが見られるようになる。

 

一見とても自由なところがあったが、自ら不自由にしてきたように感じる.

 

ワルとヨキの会話を客観的な視点で見て、自分の人生も客観的に見つめられるようになったのかもしれない。その後は心因性嚥下障害の症状が緩和され、無事に退院となった。

 

ワルとヨキを対話させてみませんか?

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心が弱っている時はワルが力を増し、味方にさえ攻撃を加えてしまう。それはワルが自分を殻に閉じ込めて、必死に守ろうとしているからこそ。根は優しいヤツなのである。

 

しかしそのままでは、ずっと孤独な思いをしなければならない。

 

生きやすい、息をしやすい毎日を送るためには、まずは内なるワルとヨキに気づいてあげることだ。それに最適な方法が、この論文でも患者が実践していた対話形式のレポート。

 

必要なものは紙とペンだけ。自分のなかの悪いヤツといいヤツを対話させれば良いだけだ。簡単すぎる心のケア方法だが、そのくせとても効果がある。

 

「あの子が嫌い」「これからが不安」「感情表現できない」などなど、ぜひ様々なテーマでワルとヨキを対話させてみて頂きたい。それぞれにキャラクター設定をすると、すごく楽しい。

 

参考文献:『二人の自分の対話という形式でのレポート記載が治療者に投影された陰性感情の緩和に有効であった心因性嚥下障害の 1 例』