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ウパだって芸達者|「輪くぐり」をするウーパールーパー

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ウーパールーパーに芸を覚えさせる?

以前ウーパールーパーを1年ほど飼育していたことがあり、そのかわいさにはたいへん癒された記憶がある。彼らはちょっとマヌケな顔が魅力なのである。唐揚げにするとおいしいのもまた魅力らしい。

 

さて、ウーパールーパーはそのマヌケ顔のイメージから「芸なんてできないだろう」と思われがちである。しかし!「オペラント条件付け」を使えば輪くぐりができるようになる。

 

オペラント条件付け

報酬や罰によって、自発的にある行動をするよう学習すること。

たとえばエドワード・ソーンダイクによる「スキナー箱」の実験では、マウスのケージにレバーを押すと餌が出る仕掛けを施したところ、餌が欲しくて自発的に何度も何度もレバーを押すようになった。

 

論文『キンギョ,アホロートル,メダカを用いた実験室外オペラント条件付けの試み』では、輪っかをくぐったウーパールーパーにご褒美として餌を与えることを繰り返して、芸を覚えさせている。

 

実験の目的は「ウーパールーパーを芸達者にすること」ではなくて「実験に使いやすく飼いやすい生物を検討すること」なのだが……、結果的に芸達者なウーパールーパーが誕生したのでした。

 

ここではどのようにウーパールーパーが芸を覚えたのか、その手順と結果をまとめている。キンギョではどうなったかも記載しているので、ぜひ比較してみて頂きたい。

 

参考文献:林美都子(2013)『キンギョ,アホロートル,メダカを用いた実験室外オペラント条件付けの試み』

 

ウーパールーパーって何?

まずは簡単にウーパールーパーについて説明する。

 

ウーパールーパーは両生類の一種で、正式名称が「アホロートル」である。アホっぽいからアホと入れたわけではない。名前の由来は死と再生を司るアステカの神ショロトルだ。アホなんて言ったらバチがあたる。

 

幼形成熟することが大きな特徴で、つまりは子供の姿のまま大人になる。ムリヤリ生態にすることもできるが、一般的には寿命が縮むと言われている。

 

野生ではメキシコの湖に生息している。しかし近年は開発によって生息地が破壊され、さらに水質汚染が進んでいるため生息数は激減。鈍感そうに見えて水質には敏感なのである。

 

ペットとしてだけではなく、実験動物食用として扱われることもある生き物。オーソドックスな白とピンクの種類(リューシスティック)以外にも、アルビノやマーブルなどの種類が存在する。

 

寿命は5~8年で、大切に育てれば10年以上も生きられる。

 

実験方法

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実験はどのように行われたのかをまとめた。

ウーパールーパー

実験には、アルビノのアホロートル1体に協力して頂いた。実験に参加した経験のないほんの3cmのチビっ子だ。実験終了時には6cmにまで成長した。

実験に使う道具

  • 約15cm×10cm×20cmの市販のプラスチック水槽
  • 針金で作った輪っか5種類(8,6,5,4,3cm)
  • ご褒美の餌:乾燥イトミミズ
  • 1.3Wの懐中電灯

 

手続き

懐中電灯でウパを2度照らしてから餌を与える訓練を6日間続けた。これによって「光に照らされたら次は餌が来るんだな」と覚えさせる。後述するが、この過程を踏むのはちゃんと意味がある。

 

次に、8㎝の輪っかを水槽の中に入れ、ウパが輪をくぐるたびに光を当てて餌を与えた。「輪っかをくぐったら良いことがあるんだね」と覚えさせるためである。

 

そして本格的な輪くぐりの学習訓練を開始した。輪を水中に入れ、ウパが輪をくぐったら輪を取り出して、光を照射したあとで餌を与える。

 

輪を入れてからくぐるまでの時間が60秒以内であることが2日続いたら、1つ小さな輪にランクアップ。その繰り返しで輪を少しずつ小さくしていった。

 

懐中電灯を使う意味

 

懐中電灯の光が無くてもいいのでは?と思うが、実は重要である。

 

最初の段階で光に照らされるたびに餌を与えていた。これによってウパは「懐中電灯の光って好きよ!」と思うようになる。そして光の照射自体がご褒美になる。

 

餌を与えることのみを報酬にした場合、輪をくぐっても瞬時にご褒美を与えることができない。何秒かもたついてしまう。このタイムロスは学習効率にものすごく影響があるため、実験者はぜひとも一瞬でご褒美を与えたいわけである。

 

そこで大活躍するのが、懐中電灯の光!実験に参加したウパにとって、光は餌と結びつく素敵なもの。輪をくぐった瞬間にピカピカッとすることで、タイムロスなしにご褒美をあげられるわけだ。

 

じゃあもう光だけでいいじゃんと思うかもしれないが、それではいけない。光に照らされても餌をくれないことが何度も続くと、ウパは光をご褒美だと思わなくなる。

 

ウーパールーパーは輪をくぐるようになったのか?

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実験の結果、ウパは明らかに芸達者になっていた。8㎝の輪を用いて20分ごとに測定した結果を比較してみよう。

 

ウパの輪くぐり成長記録

訓練初日:輪くぐり2回(くぐるまで平均223秒)

訓練6日目:輪くぐり5回(くぐるまで平均100秒)

 

たった6日でこの成長っぷり。従来のイメージを覆す、芸達者で賢いウーパールーパーの誕生である。

 

輪が小さいほど難易度が高まるようで、輪くぐりの回数はぐっと減少する。8㎝の輪であれば、2週間の訓練で約60秒以内に1回くぐるようになった。

 

実は金魚のほうが賢いかも

 

ウパの場合、6日訓練すれば8㎝の輪を20分で5回くぐるまでに成長する。しかし上には上がいた。キンギョなら20分で9回もくぐるのである。

 

キンギョの輪くぐり成長記録

訓練初日:輪くぐり3回(くぐるまで平均155秒)

訓練6日目:輪くぐり9回(くぐるまで平均40秒)

 

ただし、この結果だけでは金魚のほうが明らかに賢いと言い切ることはできない。なぜならウパとキンギョでは泳ぎのレベルが違うからだ。

 

ウパはあまり泳ぎがうまくない生き物で、成長して体が大きくなると水底でのそのそ歩きまわるようになる。一方でキンギョは泳ぎが早く、しかも正確。輪くぐりなんてお手の者である。

 

知能の優劣をつけることはできないが、「キンギョって輪くぐりうまいんだ」ということくらいはわかる。

 

☆メダカの結果も記載しようと考えていたが、複数の個体が参加しており、さらに個体差が激しいためウパとの比較は省いた。

 

まとめ

ウパも頑張れば芸ができる!あんな顔をしているけどやればできる子なんだ。と認識を改める機会になれば幸いである。

 

この訓練は「実験室外」で行われており、しかも単純なため自宅で実施できるだろう。ウパの負担にならない程度に、気長に訓練してみてもいい。あるいはキンギョに参加してもらうのも楽しそうだ。

 

そうそう、ウパと金魚は一緒の水槽に入れないように。ウパのエラ(赤い部分)は赤虫に似ているので、金魚がかじる。赤虫はキンギョにとって至高のおやつなのである。食いつきが違う。

 

参考文献:林美都子(2013)『キンギョ,アホロートル,メダカを用いた実験室外オペラント条件付けの試み』